※本記事の高額療養費制度に関する情報は、厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて」(2025年12月閣僚折衝で決定)を参考にしています。制度の詳細・最新情報は厚生労働省の公式サイトをご確認ください。
保険営業を17年やっている私が、正直に言います。
サラリーマンの方への医療保険は、私が強くお勧めしない保険の一つです。
正確に言うと、他の保険と比べて優先順位が低いと考えています。
ただし、これはあくまで一般論です。最終的には必ずコンサルをした上で提案します。なぜなら、お客様の状況は人によって全然違うからです。独身か既婚か。貯蓄はあるか。家族構成は。仕事の種類は。これらによって、必要な保険は全く変わります。
今日はその前提をお伝えした上で、サラリーマンの方への医療保険の優先順位が低い理由と、それでも2026年以降は考え方を変える必要がある理由を、現場のリアルを交えて正直にお伝えします。
サラリーマンの方にはすでに手厚い保障がある
多くの人が知らないことがあります。サラリーマンの方には、すでに3つの強力な保障制度があります。この3つを正確に理解していない人が、優先度の低い保険に加入しているケースを、現場で何度も見てきました。
① 高額療養費制度
どんなに医療費が高額になっても、1ヶ月の自己負担には上限があります。年収約370万〜770万円のサラリーマンなら、現行制度では月約8万円が上限です。
例えば、がんの手術で100万円の医療費がかかったとします。3割負担なら30万円を払うイメージがありますが、高額療養費制度があれば実際の自己負担は約8万円で止まります。残りの22万円は後から戻ってきます。
ただしこの上限額が、2026年8月から引き上げられます。詳しくは前の記事をご覧ください。
② 傷病手当金
病気やケガで仕事を休んだ時、給与の約3分の2が最長1年6ヶ月支給されます。これはサラリーマンだけが持つ、非常に手厚い制度です。自営業やフリーランスにはありません。
例えば月収30万円のサラリーマンの方が入院した場合、傷病手当金として月約20万円が国から支給されます。最長1年6ヶ月続きます。長期入院・療養になればなるほど、傷病手当金の価値は高くなります。
現場でよく聞く話があります。「医療保険の給付金が出た」と喜んでいる方が、傷病手当金の存在を知らずに申請していないケースです。まず公的制度を使い切ることが先決です。
③ 有給休暇
入院や療養中も、有給休暇があれば給与が100%支給されます。有給休暇を使い切った後、傷病手当金がカバーしてくれる。この流れが整っているサラリーマンの方は、民間の医療保険がなくても、多くのケースで対応できます。
これが、サラリーマンの方への医療保険の優先順位が低いと考える理由です。
ただし、退職後は話が変わります
ここが重要なポイントです。
傷病手当金は、在職中のサラリーマンの方だけの制度です。退職すると使えなくなります。
退職後は国民健康保険に切り替わり、高額療養費制度は引き続き使えますが、収入の保障がなくなります。入院中も生活費は発生します。貯蓄がなければ、医療費の自己負担だけでも家計を圧迫します。
ただし、退職後も継続できる場合があります。
会社によっては、在職中に加入していた共済や団体保険を、退職後も継続して利用できる制度があります。代表的なものとしては以下があります。
- 会社の団体保険の継続制度:退職後も個人契約に切り替えて継続できる場合があります。団体割引がなくなるため保険料は上がりますが、新規加入より有利な条件の場合もあります。
- 都道府県民共済・全労済などの共済:在職中から加入していれば退職後も継続できます。保険料が比較的安く、掛け捨て型として活用している方も多いです。
- 健康保険組合の任意継続:退職後2年間は、在職中の健康保険組合を任意継続できます。付帯している給付制度が手厚い場合、継続するメリットがあります。
退職前に、自分の会社の共済・団体保険・健康保険組合の制度を確認しておくことをおすすめします。知らないまま退職してしまうと、継続できたはずの制度を使えなくなるケースがあります。退職の少なくとも3ヶ月前には確認しておいてください。
特に以下の方は、退職後を見据えた医療保険の検討が必要です。
- 早期退職・定年退職を考えている方
- 再雇用後に給与が下がる予定の方
- 老後の医療費が心配な方
- 貯蓄が十分でない方
在職中は優先順位が低くても、退職後を見据えると話が変わります。だからこそ、コンサルをした上で考える必要があります。
人によって、必要な備えは全然違います
私は「サラリーマンの方への医療保険は優先順位が低い」とお伝えしましたが、これはあくまで一般論です。実際には、こんな方もいます。
- 貯蓄がほとんどない方:高額療養費制度があっても月8万円を数ヶ月払い続ける余裕がない場合、医療保険の優先度は上がります。
- 差額ベッド代が気になる方:個室や少人数部屋を希望する場合、高額療養費制度の対象外です。1日数千円〜数万円が全額自己負担になります。
- 先進医療を希望する方:がんの陽子線治療など、保険適用外の治療は全額自己負担です。数百万円かかるケースもあります。
- 家族を養っている方:自分が倒れた時の家族への影響を考えると、経済的な備えが必要です。
- 持病がある方:既往症によっては、加入できる保険が限られる場合があります。早めの検討が必要です。
一般論で「必要・不要」を決めるのではなく、あなたの状況に合わせて考えることが大切です。これがコンサルをした上で提案する理由です。
2026年以降は、特に見直しのタイミングです
高額療養費の自己負担上限額が引き上げられる今、これまで「保険はいらない」と思っていた方も、一度立ち止まって考えることをおすすめします。
- 現在がん治療中・慢性疾患がある方
→ 多数回該当から外れるリスクを確認 - 退職を5〜10年後に控えている方
→ 在職中に加入しておく方が有利な場合がある - 貯蓄が少ない方
→ 月の自己負担増加が家計に影響する
将来的な制度改正のリスクも考えておく
今回の改正は2026年8月と2027年8月の2段階で実施されます。これは偶然ではありません。
日本は今、急速な高齢化と医療費の増大という課題に直面しています。直近で2度の改正が行われるということは、「一度で終わり」ではなく、段階的に負担を増やしていく意図があると読み取ることができます。
- 今後も自己負担上限額が引き上げられる可能性がある
- 「高額療養費制度があれば大丈夫」という安心感は、将来的にさらに薄れていく可能性がある
- 制度に頼るだけでなく、自分自身の備えを考える必要性が増している
今のうちに備えを整えておくことが、将来の安心につながります。
私が実際に入っている医療保険の話
正直に話します。私自身は、医療保険に入っています。でも普通の医療保険ではありません。
「使わなければ保険料が返ってくる医療保険」です。
一定期間保険を使わなかった場合、支払った保険料の一部または全部が戻ってくる仕組みの保険です。いわゆる「払戻型」や「返戻金あり」タイプと呼ばれるものです。
なぜこの保険を選んだか。理由はシンプルです。使わなかったということは、健康でいられたということ。それ自体が最高の結果です。そして使わなかった分のお金が戻ってくるなら、「使わなかったら損」というストレスもなくなります。
もちろんこの保険にはデメリットもあります。
- 通常の医療保険より保険料が高くなる傾向がある
- 返戻金が受け取れる条件が商品によって異なる
- 早期解約すると返戻金が少ない場合がある
これが私の選択です。ただし、この保険が全員に合うとは思っていません。
保険は手段です。目的ではありません。
何のために保険に入るのかが決まっていなければ、どんな保険を選んでも「なんか違う」で終わります。だからこそ、必ずコンサルをした上で提案します。
医療保険を選ぶ時の4つのポイント
① まず公的制度を正確に把握する
医療保険を選ぶ前に、自分がすでに持っている保障を確認してください。高額療養費制度・傷病手当金・有給休暇・会社の共済や団体保険。この4つがどのくらいカバーしてくれるかを計算した上で、不足分だけを民間保険で補う。これが正しい順番です。
② 差額ベッド代と先進医療への備えを考える
高額療養費制度でカバーできない部分に、民間医療保険の主な価値があります。特に差額ベッド代と先進医療への備えは、医療保険を選ぶ具体的な理由になります。
③ 退職後を見据えた設計にする
在職中に加入しておくことで、退職後も同じ保険料で保障が続く場合があります。退職後に新規で加入すると、年齢が上がっている分保険料が高くなります。また会社の共済や団体保険が退職後も継続できるか、退職前に必ず確認してください。
④ 返戻型かどうかを検討する
「使わなければ損」のストレスを避けたい方には、保険料が返ってくる返戻型も選択肢の一つです。ただし保険料が高くなるため、家計への影響も考慮した上で判断してください。
まとめ
- サラリーマンの方への医療保険は優先順位が低い(高額療養費・傷病手当金・有給があるため)
- 退職後は傷病手当金がなくなるため、備えが必要になる場合がある
- 会社の共済・団体保険・健康保険組合の任意継続が使える場合がある。退職3ヶ月前には確認を
- 差額ベッド代・先進医療・貯蓄不足など、個人の状況によって必要性は変わる
- 2026年8月から高額療養費の自己負担上限額が引き上げられる
- 直近2度の改正は、今後も続く可能性を示唆している
- 保険は手段。必ずコンサルをした上で、目的を持って選ぶ
「今の保険で大丈夫か」「退職後はどうなるのか」「自分の場合はどう考えればいいのか」など、気になることがあれば気軽に話しかけてください。売り込みは一切しません。あなたの状況を一緒に整理するだけです。
「がんの備え」も、
考えてみませんか?
医療保険を考えるなら、知っておきたいのが「がん」への備えです。日本人の2人に1人が経験するといわれるがんについて、病気のこと・治療とお金・保険の選び方を、3回シリーズでやさしくまとめました。
- がんとは、どんな病気か
- がんの治療法と、かかるお金
- 正しい、がん保険の選び方
不安をあおる内容ではありません。落ち着いて整理するための記事です。

コメント